最近では、一昨年発表の『OurStolen Future』Colborn 和訳『奪われし未来』により、環境ホルモン
への関心が一気に高まった。
この環境ホルモンは、正式には『内分泌攪乱物質』と言い、世界中で環境中に放出され続けている
化学物質の中には、ホルモン様作用をするものが数多くあり、野生生物や人の生殖や発育の異常、
がんなどを引き起こしている可能性が指摘されている。
現在までのところ内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として、70種類以上の化学物質がリストアップされ
ている。それらの中には、DDTをはじめとする有機塩素系の農薬や代表的な環境汚染物質である
PCB、ダイオキシン類などが含まれる。(国立環境研究所ニュースより抜粋)
これら、ホルモン様の作用を示す物質は、化学物質だけでなく、勿論自然界にも数多く存在する。
自然界には自然界の摂理で、種の存続を維持する為、その種を捕食する食物連鎖の上位種を絶滅
に導こうとするような物質も、長い遺伝的な流れの中で存在している。
しかし、捕食者の方も、その長い流れの中で、何らかの防御機能を有しているものもあり、生物多様性
の観点からすると実に興味深い。
しかし、今、我々人間の作り出した化学物質が、僅か半世紀の間に、大量に環境中に放出され、それら
が、内分泌攪乱物質として、人類という種をはじめとした多くの動物を絶滅に導きはじめたかもしれないの
である。
ここで、問題なのは、『OurStolen Future』の中で指摘された化学物質の中には、@DDTのように多くの
国で製造販売禁止になったが、その物質が環境中で極めて安定な為、現在でも環境中のいたる所から検
出されているものと、Aダイオキシンのように人間生活の中から、どうしても発生してしまうもの。Bそして、現
在内分泌攪乱物質として疑わしいけれども確固たる『証拠』がなくて、現在まだ、環境中に放出され続けて
いるものがある。
埼玉県の緑茶に含まれるダイオキシンについては、多くの人々が被害者意識を持っているようだが、(
これは多分行政に対してだと思うが)実際は、その多くの人々が加害者である事も忘れてはならない。
当面、行政もダイオキシンの発生を極力抑えるべく対策をしなければならないし、消費者もゴミの分別や
ゴミの減量について考えて行かなければならない。
当面は、体内に取り込まれたダイオキシンの排せつ促進と吸収抑制をしてゆくしかないだろう。これには、
緑茶、や緑黄色野菜、繊維質の摂取により、かなり促進される事が、九州大学の研究班の研究により明らか
にされている。
また、現在内分泌攪乱物質として『疑わしい化学物質』に対しては、現在の手法では、『因果関係が立証』
されなければ、製造、販売も続けて行くというスタンスがとられており、政府も各省庁で研究班を組織して
研究調査にあたっている。
しかし、1998年1月に英国のウイングスプレッドで歴史的な宣言が採択されたてという。どのようなものかとい
うと、『事前警戒宣言』と呼ばれるもので、「ある行動が環境あるいは人を傷つけるおそれのある時には、原因
と結果の関係が科学的に充分確立されないならば、事前警戒措置がとられるべきである。」ということである。
この内分泌攪乱物質は、極めて微量なオーダーで、直接的な害よりも、世代を越えて長期間にわたり、作用
する物質が多く、それらの性質からしても、手遅れになる前に何らかの手をうたなければならないという事である。
弊社 相良物産では、以上の情報を受けて、弊社取扱商品に対する検証を進めてまいりましたが、以下の措置
を当面とることとした。
平成11年2月1日
1.前提
最近環境ホルモンという言葉が、新聞・テレビ等にて話題に上がるようになり、それら物質と農薬の因果関係についても取りざたされるようになった。
そもそも、環境ホルモンとは、生物の内分泌機能に影響を及ぼす化学物質であり、簡単に言うと、環境中に放出された化学物質が、体の中に入り我々がもつホルモンと同じような働きをしたり、ホルモンの働きのじゃまをしたりするものである。
この問題については一昨年米国で出版された”Our stolen future”(奪われし未来)がベストセラーとなり、欧米、日本にて大きな社会的関心を呼んだ事からはじまった。この本は、ホルモン様化学物質が野生生物や人の生殖や発育の異常、がんなどを引き起こしている可能性を指摘し、科学的研究と早急な対策を講ずるよう警鐘を鳴らしたものである。
これらの問題に対して、関連省庁では直ちに関連化学物質の環境中の調査や臨床試験等に入ったが、これらホルモン様化学物質はその特性として、極めて微量でも作用する事や環境中での安定性や生物連鎖の中で作用する事や世代を越えて作用する事など、その検出方法や試験方法も同時に開発されねばならず、当該化学物質の作用性を明らかにするには尚、時間がかかる事が予測される。
従来まで、化学物質等の毒性等については、因果関係実証方式をとり、単に『疑わしい』だけでの措置はとられないできた。しかし、DDTに見られるように、発売当初の人畜無害の素晴らしい安全性は、その後の研究により最悪な化学物質に変わってしまった。しかし、この化学物質に黒星がつけられるまでには更に数年かかり、その間にも環境中に放出されつづけた。その結果、環境中では非常に安定なDDTは、かなりの量が現在でも人類の脅威として、あらゆる所に存在しいてる。
このような過去の危険を繰り返させない為に、昨年英国のウイングスプレッドで歴史的な宣言が採択された。これが、俗に言う『ウイングスプレット宣言』で『事前警戒原則』をうたっている。つまり、「ある行動が環境あるいは人を傷つけるおそれがある時には、原因と結果の関係が科学的に充分確立されないならば、事前警戒措置がとられるべきである。」という。つまり、ある物質が環境や人を傷つけるかもしれないという疑いが持たれた時点で、今までは、疑いが黒星を実証しなければ、製造や販売について何もアクションを起こせなかった。しかし、この宣言では、疑いが持たれた時点で、白星の実証が無ければ、事前警戒措置として製造、販売について何らかの措置をとろうというものである。
そのような世界的な動きの中で、当社が農薬販売者として、地域や顧客に何をすべきかを検討してきた。
2.当社の行動を起こす趣旨
当社では、昭和38年より農薬販売をてがけ、この地域の農業界において、すくなからずもその発展に寄与してきた。
しかし、その販売過程においては、先のDDTのような化学物質(農薬)をも販売してきており、現在この地域で検出されるこの類の化学物質(農薬)については、当社の責任が完全に回避されうるものではない。ただ、過去のこれらの化学物質(農薬)についても、決して違法販売をしたわけではなく、農林省の登録のもと県の指導に基づいて行われてきたもので、そのような意味では不可抗力的色彩が強いのも事実である。
しかし、地方分権、自立の時代を迎えた今、一昨年は静岡県が農林省の壁を越えて茶用農薬使用方法の自己変更を行ったように、地域や個が中央に依存しないで自立する時代の中、これらの問題についても適切かつ迅速な判断や措置がのぞまれるのである。
当社169期経営基本方針にもうたったように、環境保全型農業をいち早く実現する為にも、これら「疑わしいとされる化学物質(農薬)」をこれ以上継続して環境中に放出し続けてはならないのである。
また、散布した薬剤の被爆する確率の最も高い農家への安全性を確保する為には、事前の予防措置がとられる事が適切と判断するものである。
この地域そして私たちと歩む農家の為、そしてこの日本全体、世界の為に、勇気を持って販売自粛という英断を下さなければならないのである。
3.販売自粛検討対象品目
*1997年出版の「Our Stolen Future」Colborn らの論文〔2-5〕で取り上げられた63
物質(群)とその類縁3物質及び巻き貝のイボニシに生殖阻害を生じることが日本にお いて明らかにされたトリフェニルスズの計67物質(群)から抜粋。
*1996年米国EPA発表資料参考。(Known Probable Suspect)
No | 化 学 物 質 名 | 農 薬 商 品 名 | 種 別 | 混合剤等 | 米国EPA調査 |
1 | 2,4ジクロロフェノキシ酢酸 | 2,4-D | ホルモン型除草剤 | Probable | |
2 | アラクロール | ラッソー | 土壌処理型除草剤 | Probable | |
3 | シマジン | シマジン | 土壌処理型除草剤 | ||
6 | マラチオン | マラソン | 有機リン系殺虫剤 | ハクサップ | Suspect |
7 | メソミル | ランネート | カーバメイト系殺虫剤 | Suspect | |
8 | トリフルラリン | トレファノサイド | 土壌処理型除草剤 | Probable | |
9 | ベノミル | ベンレート | 殺菌剤 | Probable | |
10 | マンゼブ(マンコゼブ) | ジマンダイセン | 殺菌剤 | Probanle | |
11 | マンネブ | マンネブダイセン | 殺菌剤 | Probable | |
12 | シペルメトリン | アグロスリン | 合成ピレスロイド殺虫剤 | Suspect | |
13 | エスフェンバレレート | スミアルファ | 合成ピレスロイド殺虫剤 | Suspect | |
14 | フェンバレレート | スミサイジン | 合成ピレスロイド殺虫剤 | ハクサップ、パーマチオン | Suspect |
15 | ペルメトリン | アディオン | 合成ピレスロイド殺虫剤 | Suspect | |
17 | ジラム | ダイボルト | 殺菌剤 | Suspect |
殺ダニ剤ケルセン剤の登録失効及び販売中止について ■登録失効日 平成16年3月22日 ■内容 農薬名(商品名)及び県防除基準記載作物 ケルセン乳剤40 ケルセン水和剤33 ダブル乳剤 以上の3剤。メーカー各社は発表後すみやかに流通在庫を回収した。 主旨としては、製造・販売メーカーは、農業以外の分野 工業用途に利用しようとしていたが 化学成分について環境影響を懸念する報告がなされた。 また、反論しようとしても研究コストが莫大となり販売に見合わないということ。 関連サイトは経済産業省のHP http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/kizontenken/031014.pdf
■ジネブ剤 登録失効 2005年12月
■エンドスルファン(ベンゾエピン) 登録失効 2010年4月
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