一昨年頃より、茶園にクワシロカイガラムシが大発生している。
このクワシロカイガラムシは、家庭の梅やミカンなどにつく、ルビーロウムシやツノロウムシなどの仲間で、ほつておくと樹液を吸い取り
寄生樹の樹勢を著しく低下させることが知られている。
オスとメスが存在し、珍しくその形態を異にする。
メスは虫体をカイガラ(成分はロウ物質)で被覆する。カイガラは白色で、中心部に橙赤色の楕円の斑点があり、(これは代1齢、2齢の脱皮殻をのせている)ほぼ直径2〜2.5mmの円形をしている。産卵前には赤みを増していく。
メスの特徴は、一生の間ほとんど貝殻の中で生活し、足は卵孵化直後には有り、歩き回って定着すると退化して歩けなくなる。
一方オスは、体長0.5〜0.7mmで羽を持ち飛ぶことができる。
卵 |
1齢幼虫 |
2齢幼虫 |
3齢幼虫 | ||
メス |
0.2〜0.3mm楕円 |
橙赤色 |
カイガラ内橙黄色 |
脱皮して大きなカイガラ |
成虫 |
オス |
0.2〜0.3mm楕円 |
白 色 |
まゆ状短楕円体 |
前蛹 |
蛹となりその後羽化成虫 |
一般的には年3回の発生。山間地では2回の所もある。
クワシロカイガラムシが自力で歩けるのは先にも示したように、幼虫の歩行期のみであるが、これはごく短い期間の事(約3日〜7日)
であり、伝播の主力は卵期であるようだ。
つまり、産卵直後から親カイガラの下にある卵が、茶摘採機や管理機その他に付着して人為的に伝播するようである。
農薬によるクワシロカイガラムシの防除であるが、通常農薬散布には防除適期という考え方で、薬剤散布をするが、クワシロカイガラムシ
がカイガラの下に居る限り、薬剤が接触する事ができず、故に難防除害虫といわれる。
防除するには、防除適期すなわち、親カイガラであるメスの成虫が産卵して、卵がなんらかの形で親カイガラの下から出て、薬剤にふれるか
孵化幼虫が親カイガラの下から這いいでて自分でカイガラを形成する約1週間くらいが防除適期となるのみである。
しかし、5月の1回目の発生時は、一つの茶園の多くが時期を同一にするが、2回目(7月)、3回目(9月)発生時は、同一茶園でも1ケ月
にわたり産卵孵化をする事があり、防除適期の短さから言うと最低3回/各期以上の薬剤散布をしなければならない。
ですから、大発生すると防除効果は著しく低下して、2〜3年続く事になる。
そのた、天敵による防除も期待されるところであるが、最近の薬剤効果からすると、天敵を殺してしまう薬剤も多く、難しいところだろう。
これは茶樹に寄生する雌成虫の産卵後のカラの下を見た所で、
中央左右の橙黄色の2つの雌成虫の周りに卵が見える。
左側の卵は孵化していず、白色だが、右側のものは孵化が近く
オレンジ色をしているのがわかる。
1996年9月撮影 相良物産株式会社 指導部
茶樹にびっしりと定着してまじかの雌成虫。
いまから、蝋物質をだしてカイガラを形成する。
1996年9月撮影 相良物産株式会社 指導部
中央の白色の筒状のものが、雄蛹である。
一般的に茶園の幹が白く見えるのは、この雄蛹が白く目立っている。
雄は成虫となり羽化して交尾に向かう。
1996年9月撮影 同
カイガラムシの天敵であるチビトビコバチ(体長0.5mm)である。
カイガラムシの雌成虫に卵を産み付け、寄生してカイガラムシを食う。
このハチは非常に小さくまた、農薬に弱い為、見つけるには一苦労だ。
1996年9月撮影 同
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